NF1の診断基準と重症度分類

診断基準

日本皮膚科学会が作成した『神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の診断基準2018』を用いて診断します。臨床的診断基準と遺伝学的診断基準があります。

臨床的診断基準

通常、臨床症状により診断を行います。各症状の詳細については、「写真で見るNF1」をご参照ください。

表 日本皮膚科学会【神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の臨床的診断基準2018】

神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018より作表

※1 出生時:~1か月、乳児期:1か月~1歳未満、幼児期:1~6歳、学童期:6~12歳、思春期:12~18歳、小児期:0~18歳
※2 診断基準は脊柱・胸郭の変形、合併頻度は脊椎の変形であることに注意
※3 四肢骨の変形・骨折あわせて3%
※4 患者の半数以上は孤発性

その他の参考所見
1. 大型の褐色斑
2. 有毛性褐青色斑
3. 若年性黄色肉芽腫
4. 貧血母斑
5. 脳脊髄腫瘍
6. Unidentified bright object(UBO)
7. 消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor, GIST)
8. 褐色細胞腫
9. 悪性末梢神経鞘腫瘍
10. 限局性学習症(学習障害)・注意欠如多動症・自閉スペクトラム症

遺伝学的診断基準1)

NF1遺伝子の病因となる変異(病的バリアント)が同定されればNF1と診断されます。NF1遺伝子のシークエンスは、本邦では保険適用がない(2023/04/03時点)ため、ほかの疾患との鑑別診断が必要な際等に遺伝カウンセリングを実施した上で行われています。

1)Maruoka R, et al.: Genet Test Mol Biomarkers 18(11): 722-735, 2014

表 NF1との鑑別が必要な疾患

大分類 疾患名
RASopathies(RAS病) Legius症候群、Noonan症候群、Noonan syndrome with multiple lentigines(LEOPARD症候群)、Cardio-Facio-Cutaneous症候群、Costello症候群等
その他 神経線維腫症2型(NF2)、McCune-Albright症候群、Proteus症候群等
  • Legius症候群:15番染色体上にあるSPRED1 遺伝子の異常により、カフェ・オ・レ斑や雀卵斑様色素斑を生じるが、神経線維腫や虹彩小結節、視神経膠腫等の腫瘍性病変の合併はみられません。NF1の診断基準を満たした患者さんの1~2%程度はLegius症候群と考えられています。
  • 神経線維腫症2型(NF2):カフェ・オ・レ斑に類似した色素斑を生じるが、神経線維腫の合併はみられない疾患です。

重症度診断(DNB分類)

重症度はStage 1~Stage 5に分類します。本邦ではStage 3以上と診断されれば、医療費公費補助・給付の対象となります(医療費助成制度についてはこちら)。
皮膚病変(D)、神経症状(N)、骨病変(B)をもとに重症度を診断します。皮膚病変はD1~D4、神経症状はN0~N2、骨病変はB0~B2に分類します。各分類の定義は以下の通りです。

表 皮膚病変(D1~D4)

分類 症状
D1 色素斑と少数の神経線維腫が存在する
D2 色素斑と比較的多数の神経線維腫が存在する
D3 顔面を含めて極めて多数の神経線維腫が存在する(1cm程度以上のものが概ね1,000個以上、体の一部から全体数を推定して評価してもよい)
D4 びまん性神経線維腫等による機能障害や著しい身体的苦痛または悪性末梢神経鞘腫瘍の併発あり

表 神経症状(N0~N2)

分類 症状
N0 神経症状なし
N1 麻痺、痛み等の神経症状や神経系に異常所見がある
N2 高度あるいは進行性の神経症状や異常所見あり

表 骨病変(B0~B2)

分類 症状
B0 骨病変なし
B1 軽度ないし中等度の骨病変
(手術治療を必要としない脊柱または四肢骨変形)
B2 高度の骨病変あり:
dystrophic type※1ないし手術治療を要する難治性の脊柱変形(側彎あるいは後彎)、四肢骨の高度の変形・偽関節・ 病的骨折、頭蓋骨欠損または顔面骨欠損

神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018より作表
※1 椎体の扇状骨浸食像(scalloping)、頂椎の椎間板高減少(wedging)、横突起や肋骨が先細り状になる(pencilling)等の特徴を有し、急速に側彎が進む脊柱側彎症2)
2)岡山大学病院 整形外科 脊椎・脊髄グループ: 神経線維腫症(Recklinghausen病)WEBサイトより, 2023/04/03確認

以上のD、N、BによってStage(重症度)を決定します。

表 重症度診断(DNB分類)一覧表

神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018より作表

表 重症度分類

各Stageの患者さんが自覚する重症度感は以下の通りです。

難病情報センター: 神経線維腫症Ⅰ型(指定難病34),
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3992 より作表, 2023/04/03確認
難病情報センターホームページ(2023年4月現在)からの転載