NF1の診断と重症度分類

診断1)
日本皮膚科学会が作成した『神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の診断基準 2018』を用いて診断します。臨床的診断と遺伝学的診断があります。
臨床的診断
通常、臨床症状により診断を行います。各症状の詳細については、「写真で見るNF1」をご参照ください。
表 日本皮膚科学会【神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の診断基準 2018】
※1 出生時:~1か月、乳児期:1か月~1歳未満、幼児期:1~6歳、学童期:6~12歳、思春期:12~18歳、小児期:0~18歳
※2 診断は脊柱・胸郭の変形、合併頻度は脊椎の変形であることに注意
※3 四肢骨の変形・骨折あわせて3%
※4 患者の半数以上は孤発性
診断基準の症状以外でも、診断の参考となる所見があります。
- 大型の褐色斑
- 有毛性褐青色斑
- 若年性黄色肉芽腫
- 貧血母斑
- 脳脊髄腫瘍
- Unidentified bright object(UBO)
- 消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor, GIST)
- 褐色細胞腫
- 悪性末梢神経鞘腫瘍
- 限局性学習症(学習障害)・注意欠如多動症・自閉スペクトラム症
遺伝学的診断
鑑別のために実施されることがあります。ただし、以下の注意点もございます。
NF1遺伝子の病因となる変異が同定されれば、神経線維腫症1型と診断する。ただし、その判定(特にミスセンス変異)においては専門科の意見を参考にする。
本邦で行われた次世代シーケンサーを用いた変異の同定率は90%以上と報告されているが、遺伝子検査で変異が同定されなくとも神経線維腫症1型を否定するわけではなく、その診断に臨床的診断基準を用いることに何ら影響を及ぼさないことに留意する。
2024年6月より、以下に該当する場合は、保険適用となりました2)。
「臨床症状や他の検査等では診断がつかない場合に、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において検査が行われる場合に算定できる」(保険点数:3,880点、検体:血液2)3))
- 神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018
- 厚生労働省ホームページ:診療報酬関連情報, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html, 2024/08/01確認
- かずさ遺伝子検査室:遺伝学的検査リスト, https://www.kazusa.or.jp/genetest/test_insured.html, 2024/08/01確認
表 NF1との鑑別が必要な疾患
疾患名(原因遺伝子) | 症状 | 備考 |
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Legius症候群 (SPRED1) |
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Noonan症候群 (PTPN11、SOS1等[ただし、約40%の患者で病因遺伝子は未同定]) |
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Noonan syndrome with multiple lentigines(LEOPARD症候群) (PTPN11等) |
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Cardio-Facio-Cutaneous症候群 (KRAS、BRAF等[ただし、約50%の患者で病因遺伝子は未同定]) |
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Costello症候群 (HRAS) |
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NF2 (NF2) |
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McCune-Albright症候群 (GNAS1) |
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Proteus症候群 (AKT1) |
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以下より作表
- 神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018
- Rauen KA.: Annu Rev Genomics Hum Genet 14: 355-369, 2013
- 難病情報センター: ヌーナン症候群(指定難病195), https://www.nanbyou.or.jp/entry/4866, 2024/08/01確認
- 難病情報センター: CFC(Cardio-facio-cutaneous)症候群, https://www.nanbyou.or.jp/entry/671, 2024/08/01確認
- 難病情報センター: コステロ症候群(指定難病104), https://www.nanbyou.or.jp/entry/4086, 2024/08/01確認
- 難病情報センター: 神経線維腫症Ⅱ型(指定難病34), https://www.nanbyou.or.jp/entry/275, 2024/08/01確認
- Gryngarten M. et al.: Arch Argent Pediatr 119(5): e420-e427, 2021
- Mirmomen SM. et al.: Sci Rep 11(1): 6577. 2021
重症度診断(DNB分類)
重症度はStage 1~Stage 5に分類します。本邦ではStage 3以上と診断されれば、医療費公費補助・給付の対象となります。ただし、高額な医療を継続することが必要な場合には、Stage3未満でも助成の対象となる可能性があります(軽症高額該当)(医療費助成制度についてはこちら)。
皮膚病変(D)、神経症状(N)、骨病変(B)をもとに重症度を診断します。皮膚病変はD1~D4、神経症状はN0~N2、骨病変はB0~B2に分類します。各分類の定義は以下の通りです。
表 DNB分類
皮膚病変
分類 | 症状 |
---|---|
D1 | 色素斑と少数の神経線維腫が存在する |
D2 | 色素斑と比較的多数の神経線維腫が存在する |
D3 | 顔面を含めて極めて多数の神経線維腫が存在する(1cm程度以上のものが概ね1,000個以上、体の一部から全体数を推定して評価してもよい) |
D4 | びまん性神経線維腫等による機能障害や著しい身体的苦痛または悪性末梢神経鞘腫瘍の併発あり |
神経症状
分類 | 症状 |
---|---|
N0 | 神経症状なし |
N1 | 麻痺、痛み等の神経症状や神経系に異常所見がある |
N2 | 高度あるいは進行性の神経症状や異常所見あり |
骨病変
分類 | 症状 |
---|---|
B0 | 骨病変なし |
B1 | 軽度ないし中等度の骨病変 (手術治療を必要としない脊柱または四肢骨変形) |
B2 | 高度の骨病変あり: dystrophic type※ないし手術治療を要する難治性の脊柱変形(側彎あるいは後彎)、四肢骨の高度の変形・偽関節・ 病的骨折、頭蓋骨欠損または顔面骨欠損 |
神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018より作表
※ 椎体の扇状骨浸食像(scalloping)、頂椎の椎間板高減少(wedging)、横突起や肋骨が先細り状になる(pencilling)等の特徴を有し、急速に側彎が進む脊柱側彎症4)。
4)岡山大学病院 整形外科 脊椎・脊髄グループ: 神経線維腫症(Recklinghausen病)WEBサイトより, 2024/08/01確認
以上のD、N、BによってStage(重症度)を決定します。
表 重症度診断(DNB分類)一覧表

各Stageの患者さんが自覚する重症度感は以下の通りです。
表 重症度分類

https://www.nanbyou.or.jp/entry/3992 より作表, 2024/08/01確認
難病情報センターホームページ(2024年8月現在)からの転載